Tsuyoshi Tamai — 脚本
エピソード 4
ちぃ おつかい
何とか、本須和のバイト先も見つかり、カタコトではあるがしゃべるようになったちぃ。
しかし、本須和には懸念が1つあったのだった。
それはパンツ。
服は日比谷さんにもらったものの、ちぃはいまだノーパン生活をしているのである。はっきり言って身体に悪い。
しかし、女性下着売り場に行ってもその前をうろうろするばかりで、中に入る決心がつかない本須和であった。
「ダ、ダメだぁぁぁぁっ!!く~っ、なんで『ぱんつください』がいえないんだよ~~~!」
しかたなしに新保に相談すると
「それなら、自分で買いに行ってもらえばいいじゃないか。」
とあっさり言い放つ。
心配でそんなことできるわけがないという本須和に、新保は、すももにはナビゲーションソフトがインストールしてあるから一緒に行かせればいいと言うのだった。
そんなわけで、ちぃは"はじめてのおつかい"に出かけることになったのだった。
そして――
「それでは、ナビゲーションを開始しまーす!大きく手足を振って元気よくまいりましょー!」
肩に乗ったすももの吹く笛に歩調を合わせて、ちぃは元気に出発したのだったが……。
もっと読むちぃ 遊ぶ
「ええっ!マ、マジッスか!?DVDなんて、ほんとに借りていいんですか!?」
「ああ、本須和くんも年ごろなんだし、色々ホラ……な?」
「な、って……。」
バイト先の店長にそんなふうに言われて、苦笑しつつも、ありがたくDVDプレイヤーを借りた本須和。
そして、その帰り道、駅前の電気屋でDVDソフトを物色していると、偶然に、稔と出会うのだった。何でも新作のネットゲームを買いに来たという。聞けば、借りたDVDプレイヤーを使えばそのネットゲームも遊べるらしかった。
「面白いですよ、パソコンと一緒に遊ぶ事もできますし。」
それを聞いて、がぜんやる気になる本須和。ちぃと一緒にネットゲームだ!、とアパートに戻ったのだが……何をどうすればネットゲームを遊べるのか、全くもって判らない始末。
「ええっ!何だよこのライセンス料って……なにーっ!月千円かかる!?あ、最初の一ヶ月は無料か……。ん?何だ、ブロードバンドアダプターって……?ま、いいや……え?パスワードが違う?何でだよ~!えっとえっと~~……。」
結局、新保に頼んで色々と設定してもらい、ネットに接続し遊べるようになったのは、翌日の夜の事であった……。
「よーし、ゲームスタート!」
そうして、ちぃ、新保、すももと一緒に、4人でネットゲームの世界に入る本須和。
「おおっ! 来た来た来たーっ!ジャンプはこれか。剣は……これか!」
初めての体験に、はしゃぐ本須和だったが、しばらくしてある事に気がつくのだった。
「ちぃが……いない……。」
一緒にアクセスしたはずのちぃの姿が、忽然とかき消えていたのだった――。
もっと読むちぃ まかなう
すももも加わっての新生活が始まったのだったが、その日戻ってきたときの本須和の表情は、落ち込みに落ち込みまくった悲惨なものだった……。
聞けば、予備校から渡された成績表の結果が散々だったのだという。
事実、全てがE判定というのはかなりヤバイ状態であった。
「……オレ、ダメかもしんない……。ヤバイよ~!このままじゃ来年も浪人生だ~!!」
けれどちょうどかかてきた新保からの電話で、清水先生からアドバイスを受けることになる。
「普段は悪くないのに、試験になると成績が下がるのよね、本須和君って。」
やればできる力があるのにもったいないと言われ、そして本番になれるためにも、全国模試を受けてみないかと勧められるのだった。
すると
「よーし!やるぞーっ!!やればできるってトコを見せてやる!」
とあっさりとヤル気を出す本須和……。
そして、それからの本須和のがんばりは目を見張るものがあった。寝る間を惜しんで勉強勉強。バイト先でも暇があれば単語帳を開いて暗記に励むのだった。
更に全国模試の一週間前になると、バイトも休みをもらい、みっちり試験勉強にとりかかろうとしたのだが……その矢先、財布を落としてしまうのだった――!
「く~~!来週の給料日までどーやって暮らすんだよ~~~!」
そんな落ち込んだ本須和の姿を見たちぃは、ちょうど受け取ったアルバイト代を本須和に上げようとするが、本須和は
「それはちぃが稼いだお金だから、ちぃの好きなように使いなさい。気持ちは受け取っておくよ。」
と言って受け取らなかったのだった。
するとちぃは
「秀樹、バイト代はちぃが使えって言ってた。だからちぃ、秀樹のために使う!」
そうして、本須和のためにご飯を作ろうとするちぃだったが――。
もっと読むちぃ だけの人
日比谷からちぃの生い立ちについて話を聞いた本須和。日比谷の亡き夫は人型パソコンを作った最初の開発者であった。そしてちぃは、子どもの生めない日比谷と自分の娘として、彼の作った2人のパソコンのうちの1人なのだという。
2人のちぃは日比谷夫妻に愛されて育っていったのだったが、しかし、もう1人のちぃが1人の女性として、日比谷の亡き夫を愛してしまったのだ。
そして、心の苦しみに耐え切れなくなったもう1人のちぃは、ちぃに記憶のすべてを移し、自分は消えようとしたのだという。けれど、データ移行時に問題が起き、2人のデータは1度、初期化されてしまって、そうなったちぃを本須和が拾ったのだった。
だから、今でもちぃの中には、ちぃ本来の純粋に人を受け入れようとする人格と、姉妹機からコピーされた、人を愛して苦しみ、心を痛めた人格が混在しているのだという。
その話をしたあと、日比谷はこう言うのだった。
「決めるのは本須和さんです。」
そうして、部屋に戻った本須和だったが、ちぃを目の前にすると、どうにも言いよどんでしまう。
そんな本須和にちぃの方から近づいてきて
「秀樹……。アナタは、アタシだけのヒト?」
そう聞いてくるのだった。
「ちぃは秀樹が好き。」
「――!」
「秀樹はちぃを好き?」
そのことばと同時に、ちぃの中のもうひとりのちぃが表に現れ、再びその力を発動させた。そして、周囲のパソコンは機能を停止してしまった。
そして、ちぃの発動を止めようとディタとジーマが現れた――。
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