最後の恋 (1997)
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山下康介 — Music
Episodes 11
売春
夏目透と篠崎アキの出会いは偶然だった。東京の待ち合わせスポットですれ違った二人。声をかけたのはアキだった。自分を金で買わないかと言うアキ。それが本気かどうかわからない夏目。しかし、お互いに強く印象に残る出会いだった。夏目は慶陽大学医学部の六年生。夏目の仲間は、助教授の娘で美人の呉林美紗子と、通称ジジイの山崎健二。三人は国家試験を目指して猛勉強の毎日だ。アキは両親が蒸発したため、弟の潤と共に施設で育った。アキは施設仲間の佐田正一の紹介でパチンコ店で働いている。潤は子どもの頃から心臓が悪く、今は慶陽大学の大学病院に入院していた。アキが見舞いに来た日、病院の中庭で、夏目とアキは再会する。夏目が潤の支えになっていてくれていることを知り、アキは喜んだ。しかし、潤は近く手術が必要になっており、高い費用が悩みの種だった。パチンコ店からの前借りも断られ、なす術のないアキは斉藤麗子のホテトルに登録する。潤のためと言い聞かせ、アキは客に体を任せるのだった・・・。
Read More僕が君を守る
朝の公園で再会した夏目とアキ。アキが落としていったチラシから、夏目はアキが体を売ったことに気づく。その後もアキの仕事は続き、お金はどんどん貯まるが、心の傷もそのつど深くなっていく。夏目は、アキにホテトルをやめるよう説得する。アキと潤の力になりたいとの思いから、きついバイトを始め、仕送りのお金を渡す。一方、アキに思いを寄せる正一は、仕事を休むようになったアキが気にかかっていた。デートに誘おうとも思うが、うまく切り出せない。パチンコ店にアキを訪ねてきた夏目を冷たくあしらってしまう。また、夏目の仲間の美紗子と健二は、最近夏目がアキと深刻そうな話をしているのを、不思議に思っていた・・・。
Read More会いたくて…
潤の手術が始まった。長い時間を一人で待つアキ。夏目からもらったお守りが心の支えだった。
その手術も無事に終り、潤は順調に回復していった。そして退院。潤は真鍋夫婦の養子になり、静岡へと向かう。夫婦は潤を大学まで行かせてくれるというし、潤本人が望んだことだが、アキは寂しくなる。アキは夏目と共に潤を見送る。それから数週間後、夏目とアキは互いに連絡も取らず、何となく距離があいてしまった。夏目は美紗子にコンサートに誘われても行く気になれない。アキのところへは、施設の仲間だった西川幸子が訪ねてきた。幸子はアキが何でも相談できる心強い味方だ。潤の忘れ物を届けに来た夏目とアキが再会する。二人はデートの約束をする。雑誌の特集にあるような、流行の最先端をゆく、センスのいいデートを期待したアキだったが、夏目が連れて来たのは競馬場だった。イメージと違い、物足りないアキ。気まずいムードが流れるが・・・。
Read More初めてのキッス
夏目の学校を訪ねたアキは、健二から夏目が女の子のあつかいに慣れていないことを聞き、ホッとする。夏目とアキは再びデートの約束をする。今度はおしゃれなデートにしようと張り切るアキだったが、なかなか行く先が決まらない。夏目の発案で静岡の潤を訪ねることにした。久しぶりに再会した夏目とアキは、潤と紙飛行機を飛ばしたり、バーベキューをしたりと、一日をたっぷり楽しんだ。潤が、もし自分に何かあったらアキのことを頼む、と言ったひと言が気になる夏目だった。美紗子が、アキの電話番号のメモを隠してしまったため、夏目はアキに連絡が取れない。パチンコ屋に電話をしても、正一が取り次いでくれない。その間、夏目は地方の病院で実習があり、夏目とアキは声を交わすこともなく、しばらく時間が過ぎる。正一に強引に誘われ、アキは遊園地に出かけた。送られて帰ってくると、アパートの前で夏目が待っていた。気まずい雰囲気だ・・・。
Read Moreふたりの夜
夏目とアキと正一が一緒に食事をすることになった。正一はアキとは高校生の頃からのつきあいで、親代わりのつもりでいる。医大生の夏目と施設育ちのアキは最初からつりあわないと考えているのだ。三人に美紗子、健二と幸子まで加わって居酒屋に集合した。その席上、正一はアキの両親がアキと弟を捨て蒸発してしまったことをすべて話してしまう。夏目にそんなアキでも好きでいられるのかと迫る。アキは肩身が狭い。その夜、珍しく酔った美紗子は夏目の部屋に泊まった。夏目は美紗子にそれでもアキが好きだと告げる。翌日、キャンパスでアキを見かけた美紗子は夏目の部屋に泊まったことを話し、夏目の勉強の邪魔になるのでもう近付かないで欲しいと伝える。アキは夏目には会わないと返事をする。とは言うものの、後味の悪い美紗子。健二に夏目とアキの仲を取り持って欲しいと頼んだ。アキは美紗子に話したとおり、夏目を避けようとする。夏目はアキのアパートを直接訪ねる。やはり、お互いに好きだと知った夏目とアキ。その夜、初めて二人は結ばれる・・・。
Read More天国の涙
夏目とアキはお互いに愛し合っていることを確かめた。不思議な出会いをして、惹かれあい、育んできた愛がやっと実った。夏目に思いを残す美紗子と、事情を知る健二も少しホッとする。
ところが、静岡から潤が危篤になったという知らせが入り、事態は一変する。アキは取るものもとりあえず、静岡へと急ぐ。潤と過ごした不幸な子ども時代が心をよぎる。しかし、間に合わず潤はアキの顔を見ることなく息を引き取った。潤の死はアキを打ちのめす。懸命に治療したにもかかわらず、潤が逝ってしまったことは夏目にもショックが大きい。やがて葬儀が済み、アキは東京に帰ってくる。アパートの前には夏目が待っていた。久しぶりに再会した二人だが、交わす言葉がない。やり場のない悲しみをアキは夏目にぶつける。ひどいことを言っていると知りながらも、アキの言葉は止まらない。夏目は講義に出る気力を失ってしまっ。アキも仕事をする気になれない。そんな二人を救ったのは、突然届いた潤からの手紙だった。アキに残されていたものが、静岡から送られてきたのだ。自分がいなくても元気に生きて欲しいと綴られていた。アキは涙が止まらない。夏目もその手紙を読んだ。そして二人は、お互いを慈しむように優しく強く抱き合った・・・。
Read More忍び寄る過去
夏目とアキは一緒に潤の墓参りに出かける。その時夏目は、近く上京する父親・敏夫に会って欲しいと切り出した。夏目の精一杯のプロポーズだ。少し考えさせて欲しいと返事を濁したアキだったが、そのすぐ後にOKする。アキに異論のあるはずがない。嬉しくてたまらないのだ。高校の同窓会があり、敏夫が小田原から上京した。敏夫は美紗子とその父親の四人で一緒に食事をしようと誘う。何かとっておきの話があるらしい。それは、夏目と美紗子を結婚させたいというものだった。敏夫と美紗子の父親は高校時代同級生で、父親たちの間では以前から結婚させたいと話し合っていたという。が、突然のことに夏目は驚いた。夏目は敏夫にアキと一緒になりたいと告げる。敏夫も驚くが、アキと三人で食事をすることになった。場所は気取った料亭で、アキには居心地が悪い。アキは自分の生い立ちなどをすべて敏夫に話す。隠し事をしないアキに敏夫は好感をもった。一方、アキが仕事をしていたホテトルのオーナー・麗子の影が不気味にアキに忍び寄る。街で偶然アキを見かけた麗子は、また仕事をして欲しいとしつこく迫る。断れば夏目にバラすと脅された。アキは夏目はそのことを知っている、と毅然と答える。そんなある日、夏目が麗子が、売春斡旋の容疑で摘発されたことをニュースで知るのだった。
Read More愛が壊れる
アキが働いていたホテトルが売春斡旋の容疑で摘発された。捜査の手はアキにまで及び、刑事が事情聴取に来る。犯罪者という言葉がきつくアキの胸につき刺さる。その様子を看護婦の中野が立ち聞きしたことから、思わぬ波紋が広がった。病院中の噂となり、美紗子と健二の耳にも届く。健二は夏目にはアキよりも美紗子の方がふさわしいと、珍しく声を荒げる。それでもアキが好きだと夏目は答えた。正一と幸子もいきさつを聞いた。潤のためだったとはいえ、正一はアキが哀れでやるせない。幸せだった夏目のアキの関係も、何かが変わっていく。アキは次第に病院に居づらくなる。それまで自分を信頼していた患者さんが避けるようになった。アキの心も深く傷つく。潤の写真に語りかけても、笑っているだけ。寂しさが一層つのるアキだった。夏目の父・敏夫の耳にも噂が届く。複雑な心境の敏夫だが、夏目を信じ深く詮索せずに小田原へ帰っていった。そんな状況の中、病院を辞めたほうがいいと、夏目が切り出した。僕が君を守ると。アキは、自分では幸せになれないのか、と問い返す。二人の気持ちに距離が生まれていた。別れの言葉を残して、アキは夏目の元を去った・・・。
Read More別れ
夏目をあきらめようとするアキ。自分は夏目にふさわしくないのか、と思いつめる。夏目が好きでたまらないからこそアキの悩みも深い。そんなアキを慰めるのは幸子だ。幸子の優しい言葉と気づかいが、アキの救い。正一もアキの売春という過去を受け入れようとする。バイトが終って夜遅く帰ったアキを、アパートの前で夏目が待っていた。アキの本当の気持ちを聞きたいと夏目。潤の病気を治そうと必死だったこと、夏目と知り合って幸せだったことなどを語り、アキは涙を流す。それを聞く夏目の切ない思いで一杯だ。夏目はこれからは、二人だから、とアキを励ます。ところが、アキが担当する患者の見舞いに牧原という男が来たことから、事態は変わる。
牧原は、アキが売春をした客だった。また、相手をして欲しいとアキにしつこく迫る牧原を、夏目は殴ってしまった。アキが悲しむ姿を見て、夏目はそうせざるを得なかった。その事件は病院でも問題になり、夏目は自宅謹慎を言い渡される。美紗子は、アキのせいで夏目は国家試験を受けられないかもしれないと、厳しくアキを非難する。アキは病院の仕事を辞めた。行き場のないアキを励ますのは正一と幸子だ。三人は渓流釣りに出かける。そして、夏目とアキは事件以来、久しぶりに再会する。アキは再び別れを告げ、夏目の元を去るのだった・・・。
Read More新しい愛
アキに別れを告げられた夏目。それでもなお、アキを忘れることはできない。バイクで転び怪我をした夏目を、美紗子が優しく手当てをする。アキと別れたことを夏目は美紗子に告げる。その夜、二人は自然に唇を重ねていた。翌日、夏目のアパートを訪ねた健二は、美紗子がアパートに泊まったことを知り、夏目を好きでたまらない美紗子の気持ちを考えろと、声を荒げる。夏目は、健二にもアキに振られたことを話す。一方、アキも夏目を別れてから元気がない。幸子はアキに、仙台の病院に行ってはどうだろうかと勧める。看護助手の仕事をしながら、看護婦の資格を取得できるという。アキにはぴったりの職場だ。また、正一はアキに自分と一緒にならないかと、声をかける。ずっとアキの幸せを願っていた正一が、ついに自分の本心を打ち明ける。夜の公園で、夏目とアキは再会する。夏目はアキにもう一度やり直せないだろうかとアキの気持ちを確かめる。アキからの電話を待っていたとも付け加えた。しかし、アキは正一との結婚をほのめかし、去っていった。夏目とアキは、このままそれぞれの道を歩いて行くのだろうか?アキは正一との結婚ではなく、仙台行きを決心していた。新感線のホームまで見送ってくれるのは幸子だけ。発車のベルが鳴る。ドアが閉まる直前、アキは電車を飛び降りた。もう一度だけ夏目に逢いたい!街を駆けるアキは、夏目との楽しい想い出を心にたどっていた・・・。
Read More祈り
夏目は国家試験を目指し、最期の追い込みの毎日だ。美紗子とは一緒に勉強をする仲だが、それ以上には発展しない。一方、アキは仙台の病院で看護助手をしながら、看護婦になるための勉強を続けていた。夏目は正一から、仙台の病院の場所を聞き、アキの忘れ物を届けにいく。しかし、一生懸命働いている姿にうたれ、声をかけることもできなかった。もう別の道を歩いていることを実感した夏目だった。医師の国家試験が行われ、夏目と美紗子、健二も学校を卒業する。東京で看護学校の予備校の集中講座に通うことになったアキは、書店で夏目に再会する。久しぶりに公園で話し合う二人。もう会うことはないと思っていたというアキ。夏目はまた必ず会えると思っていたと打ち明ける。なぜ別れたのか、夏目は確かめようとする。臆病で勇気がなかったとアキは答えた。それが過去のことのように話すアキの言葉が、夏目は寂しかった。そして、国家試験の発表会場。夏目たち三人は合格していた。夏目は結果を潤の墓に報告に行く。墓前に紙飛行機があるのを見て、夏目はアキが近くにいることを知る。やはり、アキともう一度やり直したい。夏目は、大学の構内やラボなどをアキの姿を求めて走り回る。公園でやっとアキを見つけた夏目は・・・。
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